共有名義の不動産を売却する方法とは?手続きや流れ、必要書類や売却時の注意点を解説 

土地や建物の不動産を取得する際に、自分自身で所有する場合だけではなく、他人と共有する場合があります。結婚や相続などにより、不動産を家族で共有するケースは意外と多いです。 

共有名義になると、さまざまな制限があり、容易に自由に売却するのが難しい側面があります。この記事では、共有名義の不動産を売却したい方に向けて、売却する方法について、手続きや流れ、必要書類や売却時の注意点を詳しく解説します。 

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Contents
  1. 共有持分は自由に売却できる 
  2. 共有名義不動産を売却する方法 
  3. 共有名義の不動産の売却に必要な書類 
  4. 共有名義不動産売却の手続きや流れ 
  5. 共有名義の不動産を売却する際の注意点 
  6. 他の共有者に共有持分を勝手に売却された場合の対応 
  7. 共有持分を買取業者に売却するリスク 
  8. 共有物分割請求訴訟とは 
  9. 不動産の共有名義を避ける方法 
  10. 共有名義の不動産を全員が納得して売却するためのポイント 
  11. 共有名義の不動産の売却でよくあるトラブル例 
  12. 共有名義の不動産の売却で発生する費用 
  13. まとめ 

共有持分は自由に売却できる 

共有名義の不動産を売却すると聞くと、相当な難しさを感じると思います。ここでは、そもそも共有名義とはどのようなもので、共有であることでの制約、共有者ができること、できないこと、そして共有持分の売却について確認していきたいと思います。 

共有名義の不動産とは 

共有名義の不動産とは、複数人で所有する不動産のことです。複数人を構成する一人一人は共有者として、共有持分という割合に応じて所有していることになります。 

共有持分は、その不動産に対する権利の割合のことで、通常、不動産取得の費用負担割合に応じて、または、相続の割合などによって、決まってきます。 

共有名義と単独名義の違い 

単独名義の不動産は、一人の人が所有する不動産ですので、一人でその売却を決めることができます。一方で、共有名義ですと、その売却には、共有者全員の意思統一が必要になるなど、さまざまな制限があります。 

共有名義になる原因 

不動産が共有名義になる原因としては、次のようなケースがあります。 

(1)夫婦が購入資金を出しあって、マイホームを購入したケース 

(2)親子で購入資金を出しあって、二世帯住宅を建築したケース 

(3)父親が所有していた不動産を母親や複数の子供で相続したケース 

共有者の権利と同意の範囲 

共有名義の不動産の共有持分を有する名義人を共有持分権者と言います。共有持分権者の権利、つまり、できること、できないことについては次のようにまとめられます。 

行為  具体例  条件 
保存・使用  (保存) 不動産の現状維持のための修繕、不法占拠者の追い出し、法定相続による所有移転登記 (使用) 

共有不動産(全体)の使用、居住 

単独で行うことができる 
管理(利用・改良)  (利用) 不動産の短期賃貸借契約や解約、賃料の減額 (改良) 

不動産のリフォームやリノベーション 

持分割合の過半数の同意が必要 
変更・処分  (変更) 不動産の増改築、分筆 (処分) 

不動産の売却、贈与、長期賃貸借契約、抵当権の設定 

共有者全員の同意が必要 

共有持分だけなら自由に売却できる 

不動産の売却には、共有者全員の同意が必要ですが、共有者は、自分の共有持分については、単独で売却することができます。共有者の権利は、不動産全体に対しては、不完全な権利ですが、自分の共有持分に対しては、完全な権利を持つからで、他の共有者の同意も通知も不要です。 

ただし、実際には、共有者以外の第三者へ共有持分を売却するのは、難しいところがあります。共有持分は、その不動産に対して、不完全な権利であり、自由に使用することが難しいためです。維持、管理、処分といった側面で、他の共有者との調整を要し、トラブル発生の可能性のある共有持分の第三者への売却は難しいものと言えます。 

共有名義不動産を売却する方法 

さまざまな制限のある共有名義の不動産の売却ですが、その方法については、次のような方法があります。 

  • 全員の同意を得て不動産全体を売却
  • 自分の持分のみを売却
  • 他の共有者に持分を買い取ってもらう
  • 持分割合によって分筆
  • リースバックを利用する
  • 名義変更して所有者を1人に統一する 

全員の同意を得て不動産全体を売却 

共有者全員が同意をして、不動産全体を売却するのは一番シンプルな方法です。共有者の中で一人でも売却に反対することがあれば、手続きは進められませんので、共有者の人数が多い場合には、難しいところはありますが、全員が同意すれば、その売却にかかる諸費用、売却の利益はその持分に応じて、配分することで、手続きを進められます。 

自分の持分のみを売却 

不動産の中でも、土地については、自分の共有持分だけを売却することができます。建物については、物理的に分けられないため、土地のみに対する方法です。他の共有者の同意や通知も不要です。

その場合、多くのケースでは、専門の買取業者、共有持分買取業者に依頼することになりますが、早期に売却できるメリットがある一方で、単独名義の不動産の売却に比べて、売却金額が大幅に安くなるデメリットや、後ほど述べる、トラブルが発生するリスクがあります。 

他の共有者に持分を買い取ってもらう 

自分の持分のみを売却する場合には、買取業者ではなく、他の共有者に売却する方法もあります。特に他の共有者が一人の場合には、その売却により、単独で不動産を所有することになり、その後の利用、処分などをスムーズに進められ、実現可能性が高くなります。 

一方、他の共有者が複数の場合には、実際に不動産を利用している共有者であれば、比較的スムーズに話を進められますが、そうでない場合には、その後の管理上のトラブルなど起こりえますので、売却先を選ぶ際には注意が必要です。 

持分割合によって分筆 

共有している不動産が土地である場合、持分割合で分筆し、単独名義にする方法があります。単独名義にすれば、自由に売却できます。分筆は登記簿上で1つの土地を複数に分割することです。 

 ただ、土地を持分割合で分割するには、簡単ではありません。例えば、土地を持分割合で半分ずつにする場合、その後の売却を考慮して、同じ市場価値になるよう、どのようにするのか、土地の高低、方角、道路にどれだけ面しているか、など、評価が難しくなります。

誰がどの範囲を所有するのか、話し合いや専門家の測量、所有権移転登記手続きなど、時間や費用がかかる点に注意が必要です。 

リースバックを利用する 

共有者の誰かが共有名義の不動産である家に居住し、不動産全体の売却に反対している場合には、一度、不動産会社に家を売却して、あらたに居住者が不動産会社と賃貸契約を結んで、住み続ける、リースバックという方法があります。 

メリットとしては、売却により、居住者も含めた共有者にまとまったお金が入ることです。一方、デメリットとしては、家賃相場より高い家賃設定になる傾向があり、家賃支払い総額が住宅ローンの支払総額を超える場合もあり、また不動産会社の所有物になることで、賃貸のルールが付加されたり、場合によっては、将来に賃貸契約の更新をされなかったりする可能性もあります。

リースバックをする際には、信頼できる不動産会社を利用し、契約内容をきちんと確認することが重要です。 

名義変更して所有者を1人に統一する 

共有者のうち1人が、他のすべての共有者の共有持分をすべて買い取り、単独名義にする方法です。単独名義になれば、所有者は自由に売却することができます。 

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共有名義の不動産の売却に必要な書類 

共有名義の不動産全体の売却に必要な書類は、基本的に、通常の不動産売却に必要な書類と変わりません。ただし、書類によっては、共有者全員分必要で、共有者が多く、用意するのに時間がかかることもあります。

そもそも共有者が誰なのか、相続を経て、わからなくなっているケースもあり、共有者を正確に把握することも重要です。あらかじめ必要書類を把握し、早めに準備する必要があります。 

不動産に関する書類 

不動産の所有者や土地を証明するために次のような書類が必要です。

  • 登記識別情報(登記済権利証)
  • 地積測量図・境界確認書 

 登記識別情報は、その登記人が不動産の所有者であることを証明する書類です。2006年までは、登記済権利証が発行されており、どちらかの書類が必要になります。 

地積測量図や境界確認書は、土地の面積と隣地との境界を示す書類です。先祖代々受け継がれてきた土地や家で、これらの書類がない場合には、土地家屋調査士に測量してもらうところから始めなければなりません。

測量には多額の費用と長い時間がかかる場合がありますので、必要な場合には、早めに手配する必要があります。 

共有者全員が用意する書類 

次のような書類を共有者全員が用意する必要があります。 

  • 実印
  • 印鑑証明書(3ヶ月以内に発行)
  • 住民票(3ヶ月以内に発行)
  • 身分証明書 

共有名義不動産売却の手続きや流れ 

共有者全員の同意を前提とした共有名義の不動産の売却には、多くの時間と労力がかかります。売却までの手続きをスムーズに進められるよう、その流れを確認しましょう。 

共有者の把握 

まず始めに、不動産の共有者が誰なのか、把握することが重要です。共有名義の不動産では、相続を繰り返し、把握していない共有者が存在していることがあります。

権利関係をあらかじめ正確に把握しておかないと、後で共有者が出てきて、売却手続きをやり直すことにもなりかねません。法務局で登記事項証明書を入手し、共有者を確認しましょう。 

とりまとめ役を決める 

共有者が多い場合には、その全員の同意を得ることは難しく、意見の調整や事務処理の確認など、当事者としてのとりまとめを行う役割の人が必要になってきます。

特に不動産の売却手続きとなると、専門知識や関連知識が必要になり、不動産会社、弁護士、司法書士、税理士などの手配、関係者での意思疎通を行うなど、とりまとめ役の役割は重要になります。場合によっては、事務処理などのとりまとめは、専門家である不動産会社に依頼するのも一つの方法です。 

費用負担割合の事前確認 

不動産の売却では、不動産仲介手数料、印紙税、登録免許税、抵当権抹消費用、譲渡所得税、場合によっては、測量費や弁護士、司法書士、税理士などへの手数料、など、さまざまな費用がかかります。

とりまとめ役が存在することで、手続きはスムーズに進められるものの、その費用負担はとりまとめ役が立て替えるものではありません。後でトラブルにならないように、必要な費用を把握し、共有者間で誰がいくら、負担するのか、事前に確認し、決めておく必要があります。基本的には、持分割合に応じて、費用を負担するのがおすすめです。 

最低売却価格の決定 

共有名義の不動産の売却では、売り出し価格を決めるのと同時に、最低売却価格を決めておくことがおすすめです。不動産が長期間売れない場合、購入希望者からの要請により、値下げをせざるを得ない場合が多々あります。 

 共有者が複数の場合、売り出し価格から、いくらまで下げて売るのか、その交渉のたびに、共有者全員の意思確認、同意を得ていては、時間がかかり、売却タイミングを逸してしまいます。

販売する前に事前にこれ以上は下げられない、これ以上下がるようであれば、今回は売却しないという最低売却価格を決めておけば、販売活動をスムーズに進められます。 

 また、事前に不動産会社に不動産の相場を確認して、リーズナブルな売却価格を認識した上で、売り出し価格、最低売却価格を考慮することも、長期間売れないリスクを軽減することに役立ちます。 

対象物件の販売開始と売却手続き 

共有名義の不動産の売却は、通常の不動産の売却と同様に、売り出し価格を決めて、実際には不動産会社に販売活動、仲介を依頼することになります。その販売活動により、購入者が現れ、購入を決定すると、売買契約の手続きとなります。売買契約、重要事項の説明、代金決済などの重要な場面では、共有者全員の立ち会いが必要になります。 

 ただし、どうしても立ち会いができない共有者がいる場合、病気やケガで入院していたり、海外にいたりするなど、本当に時間が取れない条件のもとでは、委任状を出すことで、他の共有者に手続きを委任することができます。

委任状には決まった用紙、形式、書式はありませんが、次のような要件は必要になります。不備があると、委任状の効力を発揮しない、委任された人が代理人として認められない、となりますので、注意しましょう。 

  • 委任者の氏名、住所、実印の押印(直筆署名)
  • 委任内容(不動産売却の意思)
  • 委任の有効期限
  • 対象不動産の情報
  • 委任する先、代理人の情報
  • 所有者の実印の印鑑証明(3ヶ月以内に発行)
  • 代理人の実印、印鑑証明、身分証明書 

売却後の税務申告(確定申告) 

不動産を売却して利益が出た場合、所得税や住民税などの税金を払う必要があるため、共有者全員がそれぞれ個別に確定申告を行う必要があります。

不動産売却に関連する税金の計算は、控除の計算など、複雑なものであり、必要に応じて、税務署や税理士に相談をして、正確を期すようにしましょう。 

共有名義の不動産を売却する際の注意点 

共有名義の不動産を売却する際には次のような点にも注意が必要です。 

必要な書類をきちんと用意する 

売却に必要な書類として、対象不動産の登記識別情報(登記済権利証)や地積測量図・境界確認書、共有者全員の印鑑証明書や住民票、そして実印や身分証明書などがありますが、どれが一つ欠けても、売却手続きは成立しません。

印鑑証明書や住民票は3ヶ月以内に発行されたものでなければなりません。また共有者の誰かが売却行為を委任する場合には、要件を満たした委任状も必要になります。共有者の数が多いほど、必要な書類は多くなりますので、必要な期日までに漏れなく用意することが必須です。 

名義の確認をきちんとおこなう 

共有名義の不動産を売却する際には、共有者、共有持分権者が誰であるのか、きちんと確認する必要があります。

特に相続を繰り返して共有されている不動産については、誰がどれだけの持分を持っているのか、容易にわからない場合もあります。そうした場合には、不動産会社や司法書士に相談をして明確にする必要があります。 

税金やローン返済を持分割合に応じて配分する 

共有名義の不動産を売却する際に、関連する税金やローンの返済についても注意が必要です。 

売却する際に住宅ローンの残債が残っている状態で売却する場合には、残債を一括返済しなければなりません。

売却金額が残債を上回ればいいですが、残債が売却金額を上回る場合には、自己資金が必要となります。その分をどの共有者がどれだけ負担するのか、事前に決めておかなければなりません。 

逆に売却により利益が出れば、譲渡所得税の支払いが必要になり、共有者が負担することを確認しておかなければなりません。 

他の共有者に共有持分を勝手に売却された場合の対応 

他の共有者が共有持分共有持分買取業者に勝手に売却していた場合、次のような対応が考えられます。 

  • 売却された共有持分をこちらが買い取る
  • こちらも自分の共有持分を売却する
  • そのままの状態を維持する 

売却された共有持分をこちらが買い取る 

共有名義の不動産をそのまま所有し続けたい場合には、売却された共有持分をこちらで買い取って、第三者共有による将来的のトラブルを避けるために単独所有にするという対応方法があります。

ただし、高値で買わされないように相場の価格を把握しておくことが必要です。 

こちらも自分の共有持分を売却する 

共有名義の不動産を特に所有し続ける必要がなく、手放してもいい場合には、自分の共有持分を売却して現金を得るという選択肢もあります。 

そのままの状態を維持する 

特に売却を急ぐ意思もない場合には、そのまま第三者を含めた共有の状態を維持することになる場合もあります。ただし、それは、将来、トラブルを起こしかねませんので、弁護士などの専門家に相談して、どのように対処するのか、決めたほうがいいでしょう。 

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共有持分を買取業者に売却するリスク 

共有持分買取業者は、最初にある共有者から共有持分を買い取ると、他の共有者からも共有持分を買い取り、不動産全体の所有権を得て、高値で不動産を売却して利益を得ます。

つまり、共有者の誰かが共有持分買取業者に共有持分を売却すると、他の共有者に売却を持ちかけてくることになるケースが多いです。

共有持分の売却は、他の共有者の同意、通知も不要であるため、買取業者による買取の事実を後で知ることも多く、大きなトラブルに発展することがあります。買取業者に売却すると、次のようなリスクが考えられます。 

共有持分の売却・買取の交渉が発生する 

共有持分を買い取った買取業者が他の共有者に共有持分の買取を持ちかけてきます。納得できる価格であれば、売却するのも1つの方法ですし、逆に買取業者の共有持分をこちらで買い取り、完全な所有権を得るという方法もあります。

希望する金額であれば、どちらもあり得ますが、安く買って高く売ることで利益を得る買取業者とのやりとりでは、希望通りに取引できるケースは少ないです。 

共有不動産に出入りされる 

共有持分を第三者である買取業者が買い取ると、共有者であることから、共有不動産に出入りすることができるようになりますし、不動産を使用する可能性もあります。自分の所有する不動産に知らない第三者が出入りするのは、精神的負担になります。 

家賃請求や税金滞納のリスク 

共有不動産が他者へ賃貸されている場合には、その家賃収入は共有者の按分になるため、共有持分を得た買取業者は持分に応じて請求してきます。

また、共有不動産固定資産税は、やはり共有者間での按分の負担になることから、買取業者ときちんと確認してスムーズに按分負担できればいいですが、そうでない場合には、税金の滞納のリスクもあります。 

共有物分割請求をされる可能性がある 

共有持分の買取交渉がうまくいかなくなると、買取業者は、共有物分割請求を行います。共有分割請求は、共有名義の不動産の共有状態を解消し、他の共有者に分割を求める手続きで、各共有者に認められた権利です。

共有分割請求には法的拘束力があり、当事者である各共有者は共有状態の解消のために話し合いをしなければなりません。話し合いで解決しない場合には、裁判所にて共有物分割請求訴訟を起こすことになります。

その判決によって、その不動産の分割方法が決まります。物件を強制売却して得たお金を分けるか、どちらかが代償金を払って不動産を取得するケースが多いです。 

共有物分割請求訴訟とは 

共有名義の不動産において、共有状態を解消するために、ある共有者が他の共有者協議を行い、解消しない場合に、共有物分割請求訴訟の申立てをすることになります。

その判決に従い、共有の不動産は分割され、共有状態は解消することになります。ここでは、その判決の3つのパターン、共有物分割請求訴訟メリット・デメリットを紹介します。 

共有物分割請求訴訟による判決の3つのパターン 

共有物分割請求訴訟による判決は次の3つのパターンの中選ばれます。 

  • 現物分割
  • 代償分割
  • 換価分割 

現物分割 

現物分割は、不動産を分筆することで、物理的に分割する方法です。分割した土地は、各共有者が単独で取得します。ただし、建物は物理的に分割できないので、現物分割できません。 

原則として、現物分割が優先されますが、建物が含まれる場合には、代償分割か換価分割になるケースが多いです。 

 代償分割 

代償分割は、共有者の一人が不動産を取得し、他の共有者に持分割合に応じた代償金を支払うことで、共有状態を解消します。ただし、不動産取得する共有者が代償金を支払える能力があることが条件になります。そうでない場合には、次の換価分割になるケースが多いです。 

 換価分割 

換価分割は、共有不動産を競売にかけ、その売却代金を持分割合に応じて分配する方法です。ただし、競売による落札金額は、不動産の市場価格の5割から7割程度になることが多く、共有者全員が金銭的に損をする可能性があります。 

共有物分割請求訴訟のメリット 

共有名義の不動産の処分は、共有者全員の合意が必要になりますが、共有物分割請求訴訟の判決が出れば、それに強制的に従わざるを得ず、共有者の合意は不要で、共有者の意見がまとまらなくても、共有状態を解消することができる点がメリットです。 

また、判決によるので、不動産鑑定士の不動産評価も含めた、公的な客観的な結論となり、それぞれの主張を持った共有者にとっても、結論を出すため納得感を得られやすい点もメリットです。 

共有物分割請求訴訟のデメリット 

共有物分割請求訴訟も裁判ですので、共有者間での人間関係の問題が生ずる可能性がありますし、時間や費用も掛かると思われますので、弁護士とよく相談してから対応するようにしましょう。 

不動産の共有名義を避ける方法 

共有持分権者による共有持分の売却、その結果としての共有持分買取業者との共有トラブルを防ぐためには、そもそも不動産の共有名義を避けることが重要です。特に遺産相続においては、次のような方法を考える必要があります。 

遺産分割時に不動産を共有名義にしない 

まずは、遺産分割の際に、その対象不動産を共有名義にしないことです。 

その方法としては3つあります。 

(1)現物分割、土地そのものを分筆して、分ける方法 

(2)代償分割、相続人の一人が他の相続人に代償金を払って、不動産を単独で取得する方法 

(3)換価分割、不動産を売却して、売却金を分ける方法 

共有物分割をして、共有名義を解消する 

遺産相続時に不動産を共有名義にしてしまったら、早めに相続人の間で、現物分割、代償分割、換価分割のいずれかで共有物を分割して、共有名義を解消し、共有持分の売却のリスクを回避しましょう。 

弁護士に相談する 

不動産の共有トラブルが発生すると、当事者としての共有者同士の人間関係が悪化します。共有状態をどのように解消したらいいのか、共有持分の売却が起きたらどうしたらいいのか、など、不動産に詳しい弁護士に相談できれば、未然にトラブルを防ぐこともできます。 

共有名義の不動産を全員が納得して売却するためのポイント 

共有名義の不動産を売却するには、共有者全員が納得する必要があります。 

共有者全員が納得しやすい方法として次の方法が考えられます。 

不動産一括査定サイトを利用する 

共有者全員が共有不動産を売却することに同意するためには、その売却が実現性のある、具体的な内容であることを理解しなければなりません。そのためにも、対象の不動産が実際に売れるのか、その相場の価格を理解する必要があります。 

不動産の一括査定のサイトを利用すれば、一度の申請で複数の不動産会社に査定を依頼し、複数の査定結果を確認し、客観的な、より実現性のある売却想定金額を把握することができます。それにより、具体的な売却のイメージが湧き、現実的な売却への期待、納得感のある売却への同意を得やすくなります。 

不動産の専門家に相談する 

不動産会社の担当者など、不動産の専門家に相談するのも1つの方法です。不動産会社の担当者であれば、さまざまな売却のケースを経験しているので、共有名義の不動産の売却、共有者の中の一部の人が売却に同意しない状況などへの対応について、有益なアドバイスが得られることが期待できます。 

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共有名義の不動産の売却でよくあるトラブル例 

共有名義の不動産の売却において、さまざまなトラブルが起こり得ます。 

共有持分共有持分買取業者に売却した場合の後のトラブルについては、上記記載の「共有持分を買取業者に売却するリスク」にて説明いたしましたが、その他のトラブルについてもここで把握しておきましょう。 

共有者を把握できない 

共有不動産を売却するのに、そもそも共有者が把握できていない、ということがあります。相続登記をしないまま、相続を繰り返してきたケースに見られます。

共有者が把握できないと、共有者全員の同意による売却ができないだけでなく、共有持分を買取業者へ売却することさえ難しくなります。まずは司法書士に相談し、共有者の把握に努めることが必要です。 

売却価格が折り合わない 

共有持分を他の共有者に売却する際に売却価格が折り合わないことがあります。売る側は高く、買う側は安く、それぞれが参考価格を持ち込み、都合よく交渉するからです。

相場の価格を客観的に評価するのは、不動産鑑定士の評価を得たり、さまざまな不動産会社の査定結果を得たりすることで、お互いが納得する相場の価格を認識することが必要です。 

安すぎる価格での売却は贈与とみなされる可能性がある 

共有名義の不動産では、その共有者が親族、家族であることが多く、共有持分をその間で売却するケースがあります。親しい間柄であることから、無償で譲りたい、安く売りたい、と考えることも多いです。

しかし、相場の価格からかけ離れた、安すぎる価格で売却されると、贈与とみなされ、後で贈与税を課されることもあります。親しい間柄での共有持分の売却においても、適正価格での売却が重要で、取引の客観性を保つためにも、不動産会社の仲介で売却を行うようにしましょう。 

一部の共有者が買取にも売却にも同意しない 

共有名義の不動産の一部の共有者が不動産の売却に同意しない、他の共有者への共有持分の売却にも応じない、逆に他の共有者からの共有持分の買取にも応じない、となると、共有不動産の処分が全く進まないことになります。

そうした場合には、共有物分割請求を行い、共有者間での共有状態の解消に向けての話し合いを行い、それでも折り合わない場合には、裁判所にて共有物分割請求訴訟を起こして、その判決をもって、共有状態の解消を図る流れになります。 

共有名義の不動産の売却で発生する費用 

共有名義の不動産を売却する場合には、次のような費用がかかってきます。 

仲介手数料 

不動産の売却が成立した際に仲介した不動産会社へ支払う手数料になります。その金額は売買金額により変動します。売買金額が400万円を超えると、売買金額の3%+6万円+消費税の金額になります。例えば、売却金額が5千万円であれば、171.6万円になります。 

印紙税 

不動産の売買契約書を作成する際にかかる税金になります。契約書上の売買金額によって、税金の金額が異なります。例えば、売買金額が5千万円超1億円以下であれば、印紙税は6万円になります。印紙税の負担者は特定されておらず、売主、買主で折半するか、どちらか一方が負担することになります。 

登録免許税 

売却の対象不動産に住宅ローンの残債があって、抵当権が設定されている場合に抵当権を抹消登記する場合にかかるもので、不動産1個につき、1千円です。 

司法書士報酬 

司法書士に抵当権の抹消を依頼する場合にかかる費用で、1万5千円から2万円が相場です。 

まとめ 

共有名義の不動産は、共有者が複数いるために、売却するのに難しい側面があります。その共有者が亡くなると、相続が発生して、さらに共有者が増えることになり、時間が経つほど、ますます共有者の意見をまとめるのが難しくなり、売却が難しくなります。 

 共有名義の不動産の売却を考えている場合には、なるべく早く、共有名義の解消のための手立てを講じる必要があります。

そのためには、共有者間でのやりとりだけでなく、不動産や法律上の専門的な知識を要する場面も多いので、特に共有名義の不動産について詳しい専門家に相談して進めることをおすすめします。

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