共有不動産・共有持分の使用・収益トラブルの解決方法!
共有不動産の使用・収益についてトラブルになった場合の解決方法!
(共有者の一人が居住する場合や賃料収入を独り占めする場合)
共有不動産とは?
2人以上の人によって共有された状態にある不動産のことを共有不動産といいます。親子・夫婦・兄弟姉妹などが一緒に購入し、最初から共有状態になっているケースもありますが、最初は単独所有だった不動産が後から共有状態になるケースもあります。後者の典型的な例は相続です。たとえば親が単独で所有していた不動産を複数の子が相続すれば、結果として共有状態が生じることになります。
ここで共有というのは、それぞれの所有者が持分の割合に応じた所有権を持つことを指しています。したがって、たとえば所有者の1人が特定の部屋に関する権利を持つ、といった状態ではありません。原則として、それぞれの所有者は不動産の全てを持分割合に従って利用することができます。
所有者の持分割合は頭数で決まるものではないため、必ずしも均等になっているわけではありません。購入する時点で共有状態になるケースでは、支払った金額に応じた持分割合になるのが基本です。たとえば5,000万円の不動産を購入する際に、1人が3,000万円、もう1人が2,000万円を支払ったとすれば、それぞれ3/5、2/5の持分を有することになります。
また、相続が発生したことによって共有不動産になる場合は、民法で定められている法定相続分によって持分割合が決定されるのが一般的です。相続人による協議で法定相続分とは異なる持分割合にすることも可能ですが、誰が当該不動産を相続するかを決められなかったために、仕方なく一時的な共有状態にしているケースが多いと考えられます。
持分割合が少ない所有者であっても、不動産を利用するに当たって制限が課せられることはありません。原則として、当該不動産の全体を利用することが認められています。ただし、不動産から生じる利益がある場合は注意が必要です。所有者自身が居住している不動産であれば特に利益が生じることはないわけですが、不動産がマンション・アパートなどの賃貸物件だとすれば事情が異なります。賃貸借契約に基づいて賃料収入を得ている場合、その収入は所有者の頭数ではなく、持分割合に応じて分けるのです。
たとえば持分割合が3/5、2/5という2人で共有している不動産を誰かに貸していて、100万円の家賃を受け取る契約になっているケースでは、2人の共有者がそれぞれ60万円、40万円を得ることになります。
共有不動産という形になっているケースは決して珍しいことではないのですが、これが望ましい状態であるとは言えません。動産であれ不動産であれ、1つの物の所有者は1人であることが好ましいのです。もちろん、複数の所有者が不動産を共有していても、人間関係が良好な状態が続くのであれば特に問題が生じることはありません。しかし人間関係は不変ではなく、次第に悪化してしまう可能性があるものです。
最初は共有者の全員が一緒に住んでいた不動産に誰か1人が居住することになったり、受け取った賃料収入を1人が独占し、他の所有者に分配しなかったりするようになると、さまざまなトラブルが発生します。
共有不動産に関してトラブルが発生しても、共有者の人間関係が良好な時期なら大きな問題は生じません。話し合いをすることで容易に解決できます。しかし関係が悪化してからトラブルになった場合は、それぞれの主張がぶつかり合い、なかなか解決の糸口が掴めないものです。そもそも、もはや話し合いができるような状況ではなくなっているのが普通です。当事者だけでは解決できないまま、トラブルが長期化してしまうことも少なくありません。
共有不動産の使用・収益のトラブルの内容
不動産を使用しているときには、さまざまなトラブルが発生することがあります。これは、不動産を単独で所有している場合でも、複数の人で共有している場合でも同じです。ただし、共有不動産に関するトラブルでは複数の人の利害が絡み合うため、問題が複雑化しやすいと考えられます。当然のことながら、スムーズに解決できる可能性は低くなります。
共有不動産を使用したり、誰かに貸して賃料収入を得ようと考えていたりするときは、どのようなトラブルが起こりやすいのかを知っておくことが大切です。そうすれば、万が一トラブルが発生してしまっても慌てずに対処できるようになります。また、そもそもトラブルが発生しないように事前の対策を講じることも可能です。
トラブルが発生しやすい状況について考える際は、共有者自身が居住する不動産なのか、それとも誰かに貸して賃料収入を得るための賃貸物件なのかを考慮しなければなりません。どちらのタイプの不動産なのかによって、起こりうるトラブルは異なっています。
共有者自身が居住する不動産におけるトラブル
たとえば、兄弟姉妹が相続した不動産に一緒に住んでいる状況です。関係が良好なまま一緒に住み続けられるのであれば問題はないのですが、たいていは結婚などを機に家を出ていく者がいて、最終的には誰か1人が居住することになります。家を出ていったとしても、所有権を放棄するような特段の事情がない限り、当該不動産に関する権利は持ち続けています。居住し続ける人の権利が増えるわけではなく、それぞれが持分割合に応じた権利を持つことに変わりはないのです。
単独で居住するようになった者が、不動産に何も手を加えないまま住み続けているうちは問題はありません。しかし通常は数年ほどで傷みが生じ、修繕する必要が出てきます。また、居住者がそれまでとは違う形で不動産を使用したいと考えることもあります。たとえば短期賃貸借契約を設定して他の人に貸したり、所有している土地に新たな建物を建てたり、居住している建物を増築したりする場合です。
このうち修繕に関しては他の所有者にとっても利益となるため、居住者が単独で行うことができます。しかし不動産の使用方法が変わるケースについては、他の共有者の同意が必要です。短期賃貸借契約であれば過半数の同意で済みますが、増築のように不動産の状態が大きく変わるケースでは全員の同意が必要になります。ここで過半数というのは、共有者の人数の過半数ではなく持分割合の過半数です。
ここで同意できない共有者が、居住者に対して不動産の明渡・共有持分の買取を請求することがあります。ただし、請求すること自体は可能ですが、強制力を持つわけではないことに注意が必要です。相手が応じなければ話は進みません。居住者が明渡請求に応じなかったり、持分の買取金額で折り合いがつかなかったりすると、トラブルに発展しやすいです。
賃料収入を得るための物件におけるトラブル
通常の場合、誰か1人がまとめて賃料を受け取り、それを持分割合に応じて他の共有者に分配する形になっています。きちんと分配されていれば問題ないのですが、途中から分配がなされなくなってトラブルが発生することが多いです。賃料を受け取れていない共有者としては、賃料を受け取った者に対して分配を請求することになります。自分が受け取るはずの金銭を渡してもらうための請求なので、正当な請求だといえます。しかし、相手が請求に応じてくれないと、回収するのは非常に困難です。
分配してもらえないからといって、相手のところから勝手に金銭を持ってくることは認められていません。地道に請求を続けることになります。賃料の受取人を変更するという解決策もありますが、3人以上で共有している場合などは、誰に変更するのかという問題が生じます。
共有不動産の使用・収益のトラブルが生ずる原因
不動産の所有者が1人であれば、自由に増改築を施したり、誰かに貸したりすることができます。賃料収入を得ている場合、その賃料を他の人に分配する必要もありません。ところが2人以上で共有することになると、不動産に関する行為の大半で話し合いの場を設ける必要が生じます。
共有不動産の場合でも、共有者の人数が少なければ話し合いをスムーズに進めることが容易なので、大きなトラブルにはつながりにくいです。しかし多くの共有者で話し合いの場を設けると、なかなか意見がまとまらなくなります。
他の共有者の同意が必要になるケースでも、不動産を処分するような行為を除き、必ずしも全員が同意していなくても問題ありません。持分割合の過半数の同意さえあれば済むケースも多いです。ただ、当然のことながら反対している人がその結果を全面的に受け入れるはずがありません。過半数の同意になってしまったから、仕方なく同意せざるを得ないだけに過ぎないのです。
このようなとき、話し合いの結果に納得できない反対者が、他の共有者に持分の買取を請求できる仕組みになっていればトラブルが小さくなります。ところが実際は、請求すること自体は可能であっても、請求された側には応じる義務がありません。買取金額の点で折り合いがつかず、いつまでも共有状態が続くことになりがちです。
賃料収入を受け取ったまま他の共有者に分配しない者がいる場合、他の共有者としては自分の取り分を渡してもらうように請求するしかありません。しかし、請求しても渡してもらえないとなると、自分の取り分を確保するのは極めて困難な状況になってしまいます。原則として、裁判を起こさない限り相手から強制的にお金を取ることはできません。
共有不動産にトラブルが起こりやすい最大の原因は、共有状態になった最初の時点の人間関係がいつまでも続くわけではないことにあります。トラブルになることが最初から分かっていれば、誰でも共有状態を作らないように努力するものです。土地であれ建物であれ、不動産の所有者は1人であることが望ましいのは言うまでもありません。
共有不動産に共有者全員が住んでいる状況であれば、それぞれの利害関係が大きく対立する可能性が低く、話し合いがスムーズに進められることもあります。しかし誰か1人が居住する状況になっていると、居住者と他の共有者の間で対立が生まれがちです。居住している人としては増築することが利益だと思えても、居住していない人にとっては余計なことに感じられたりします。
とりわけ厄介なのは、共有者同士の関係が悪化している場合のトラブルです。それぞれが自分の権利を主張するばかりになり、なかなか解決策を導き出すことができなくなります。また、トラブルを解決するための特別な仕組みは用意されていません。
トラブルを解決するには複数の方法を用いることができますが、もっとも望ましいのは不動産の共有状態を解消し、単独所有の状態にすることです。ただ、持分の買取請求権がない状況で、共有者全員が納得できる形で解決するのは極めて困難だといえます。第三者に売却するという選択肢もありますが、トラブルが起こりやすい共有不動産の買い手を見つけるのは容易ではありません。また、不動産の売却には共有者全員の同意が必要になるため、トラブルになっている段階での売却は現実的な解決策とは言えないわけです。
共有不動産には複数の人の利害関係が複雑に絡み合うことになるため、さまざまなトラブルが起こってしまいます。不動産を共有する形になる最初の時点で、将来的にはトラブルが起こりうることを認識しておくことが大切です。そうすれば、話し合いがスムーズに進められる時期に共有状態を解決できる可能性があります。
共有不動産の使用・収益のトラブルの解決方法
共有不動産に関するトラブルを未然に防ぐためには、できるだけ早い段階で共有状態を解消させることが望ましいです。相続で兄弟姉妹が一時的に共有する状態になったような場合、いつまでも共有不動産のままにしておくことを望んでいるわけではありません。遺産分割の話し合いを早めに進めることで、不動産の所有者を明確にすることが大切です。民法907条は、いつでも遺産分割ができるのを原則としています。
共有状態が長く続くと、話し合いをするタイミングを失してしまう可能性があります。たとえば、居住者が次第に少なくなり、誰か1人が共有不動産に居住するようになった場合、この段階で決めてしまうのがベストです。不動産の増改築、賃料の分配など、さまざまなトラブルを未然に防ぐことができます。
ただし、どのタイミングで話し合いをするにしても、他の共有者に自分の持分を強制的に買い取らせる権利はないことに注意が必要です。全員の合意がなければ、共有状態を解消させることはできません。人間関係が良好な時期に話し合いを始めていれば、金額などの面で互いに譲歩し合える可能性が高いですが、それでも合意に至る保証はないのです。
共有不動産に関するトラブルが起こってしまったときは、まず当事者間で話し合いの場を設けます。ただし、話し合いがうまくいかないまま長引くと感情的な争いになりやすいため注意が必要です。最終的には法律に従って結論を出すしかありません。早めに弁護士に相談することが不可欠です。
トラブルが起こる最大の原因は1つの不動産を複数で共有していることなので、共有状態を解消させる方法を考えなければなりません。民法256条には、各共有者が『いつでも共有物の分割を請求することができる』という規定があるので、これに基づいた請求をするのが基本です。もちろん当事者間で妥当な結論が出せない場合も多いですが、そのときは裁判所に分割を請求することが民法258条で認められています。
共有不動産の使用・収益のトラブルの解決方法3方法
共有不動産のトラブルを解消させる方法としては、大きく分けて3つの方法が用いられることが多いです。
共有物分割
1つ目は、不動産を物理的に分割する方法です。しかし物理的に分割することは通常は不可能で、可能だったとしても不動産の価値を大きく下げることにつながります。そのため、たいていは他の方法による解決を目指していきます。
裁判で解決する場合は現物分割を行うのが原則です。文字どおり、当該不動産を物理的に分ける方法です。しかし、物理的な分割ができる不動産は限られています。また、分割が可能ではあっても、分割することで不動産の価値が大きく下がり、共有者にとって不利益な結果になりやすいです。
共有物競売
2つ目は、当該不動産を競売によって売却し、得られた代金を共有者で持分割合に従って分割する方法です。この方法によると金銭的には公平な解決ができるのですが、売却価格が想定していた金額よりも安くなってしまうと不満が残る可能性があります。また、当該不動産に住み続けたいと考えている人はそもそも競売による方法には反対します。
このような場合、裁判所は民法258条2項に基づいて競売を命じることがあります。当該不動産を分割せず、競売によって得られた代金を共有者で持分割合に従って分けるのです。競売は金銭的に公平な解決ができるため、良さそうな方法に見えます。しかし、高額で売却できる可能性は低いため、受け取れる金額が少なくなって不満が残りやすいです。また、当該不動産に住み続けたいと考えている人はそもそも競売による方法には反対します。
共有物集約
3つ目の方法は、共有状態を解消させて所有者を誰か1人に定めるものです。この場合、他の共有者の持分を最終的な所有者が買い取る形になります。不動産を残したままトラブルを解決できる方法なので、もっとも望ましい結論になる可能性が高いです。ただ、それぞれの持分を金銭的に評価するのは難しく、評価できたとしても誰もが納得するとは限りません。
もっとも納得のいく解決につながりやすいのが3つ目の方法で、共有状態を解消させて所有者を誰か1人に定めるものです。この場合、他の共有者の持分を最終的な所有者が買い取る形になります。不動産をそのままの状態で残すことができるため、理想的な解決方法だと考えられます。ただし、それぞれの持分を金銭的に評価するのは容易ではなく、当事者間の話し合いがまとまらないことが多いです。
まとめ
当事者間の話し合いを続けていくと、感情的な争いに発展してしまうこともあります。冷静に解決するためにも、早い段階で弁護士に相談することが不可欠です。
不動産の所有者は1人であることが望ましく、共有不動産を共有ではない状態にする請求は民法で認められています。ただ、当事者間で請求するだけでは強制力がないため、裁判によって解決することになります。
話がまとまりにくい理由は、算定方法などに関する明確な規定がないことにあります。金額に関して民法253条2項に『相当の償金』という文言がありますが、何をもって相当と言えるのかは規定されていません。不動産鑑定士による鑑定を受けるのも1つの方法ですが、裁判所が類似の事例などを基準に判断し、納得のいく結論に近づけていくのが一般的です。
裁判というと強制的な判決によって解決するイメージが強いですが、最初から裁判所が強制的に決めるわけではありません。できるだけ円満な解決につなげられるようにするのが基本です。当事者としては、金額などの面で絶対に譲れないラインを決めておき、妥協できる部分については妥協する姿勢で裁判に臨むことが求められます。話し合いがまとまらない場合には、裁判所の判決によって解決します。
どのように解決するのが最適なのかは、共有不動産の状態や当事者の考え方などによって大きく変わってくるものです。最初の時点では不動産を売却しない方がよいと思っていても、他の方法があることを知れば考え方が変わる場合もあります。最善の結論を出すためには、1つの方法にこだわりすぎず、さまざまな方法を地道に検討することが大切です。
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